HOME>セミナー・イベント>アフターレポート
「形式手法はソフトウエア開発を救う!」
〜VDMによる組込ソフトウエア開発の標準化を目指して〜
セミナー風景VDM(The Vienna Development Method)は、ISO標準規格にもなっている代表的な形式手法(*1)の1つでソフトウェア開発初期段階での誤りの発見に有効であるといわれています。組込システム事業本部は、このVDMの日本での普及を目的に2005年8月3〜4日の2日間、西日本地区(大阪証券取引所ビル)、東日本地区(センチュリーハイアット東京)にてシンポジウムを開催し、VDMの概念や活用事例を紹介しました。

シンポジウムは有賀取締役による開会の挨拶に始まり、第1部では開発者からVDMについてご紹介いただき、第2部では実際にVDMを使って開発を行なった企業担当者の方々や大学教授にお話いただきました。最後に、西日本地区では谷原執行役員西日本事業本部長、東日本地区では鈴木常務執行役員組込システム事業本部長が閉会の挨拶を行い、大盛況のうちに終了となりました。こちらでは東日本地区での模様をお伝えします。

日時 2005年 08月 03日(水) 〜 04日(木)
会場 西日本地区(大阪証券取引所ビル)、東日本地区(センチュリーハイアット東京)
主催 株式会社CSK


開会挨拶
株式会社CSK 取締役 有賀 貞一
  講師写真ソフトウェアをいかに正しく作るかということは、単に品質のみではなく企業の明暗をわけるほど、重大な話です。CSKはソフトウェア開発の社会における重要性を鑑み、昨年、VDMTools(*2)の全ての知的所有権を買い取りました。初版は無償で提供していますので、ぜひトライアルで活用して下さい。今後CSKは、VDMToolsのアップグレードや欧米学会との連携等を通じて、日本のソフトウェア品質の向上に貢献していきたいと考えています。
 
「A Triptych of Software Engineering Formal Methods for Domains, in Requirements and for Software」
デンマーク工科大学 教授 ビョルナー(Dines Bjørner) 様
「VDMTools: Developing industrial quality tool support for VDM」
オーフス工科大学 助教授 ラルセン(Peter Gorm Larsen) 博士
  第1部では、VDMの開発者でソフトウェア工学・形式手法における第一人者であるデンマーク工科大学 ビョルナー教授と、VDMToolsを開発したオーフス工科大学 ラルセン博士の講演が行なわれました。ビョルナー教授からは、ソフトウェア工学における形式手法(VDM)の役割について講演いただき、ラルセン博士からは、VDMTools開発の歴史と組込みソフトウェア開発への適用可能性についてそれぞれ講演いただきました。

講師写真 ■デンマーク工科大学 ビョルナー 教授
ソフトウェア工学・形式手法における第一人者。イギリス ニューキャッスル大学のジョーンズ先生とともに、1970年代前半にIBMウィーン研究所でVDMを開発。その後、国連大学ソフトウェア研究所長などを歴任。2005年9月からは、北陸先端科学技術大学院大学の客員教授に就任予定。


講師写真■オーフス工科大学 ラルセン 博士
旧IFAD社(アイファド社)において、VDMToolsを開発。VDM-SLのISO標準作成において中心となって活躍。VDMに関する教科書も執筆。現在はデンマーク オーフス工科大学助教授として活躍。


「モバイル FeliCa IC チップの開発における形式仕様記述手法導入」
フェリカネットワークス株式会社 シニアシステムアーキテクト 関谷 秀一 様
                    開発部ソフトウェア開発課 統括課長 栗田 太郎 様
「フォーマルメソッドの効用と導入法:形式仕様で何をどう書くか?」
九州大学 教授 荒木 啓二郎 様
  第2部では、フェリカネットワークス株式会社様から、携帯電話組込み用ICチップファームウェア開発においての形式仕様記述手法を導入した効果とその課題について講演いただいた後、日本における形式手法の実践的研究の第一人者である九州大学 荒木教授からは、形式手法によるソフトウェア開発方法の概要、および適用事例を通して形式手法導入のポイントについて講演がありました。

■フェリカネットワークス株式会社様
非接触ICカード技術「FeliCa」を用いた携帯電話向けFeliCa機能搭載IC(モバイルFeliCa IC)チップを中心とする、デバイス・OSの開発・製造・販売に関するライセンス事業、およびFeliCaを用いたサービスを展開する事業者向けのプラットフォームの運営事業を展開。FeliCaのICチップ開発において実際にVDMToolsを使用。
講師写真   講師写真

講師写真■九州大学 荒木 啓二郎 教授
日本における形式手法の実践的研究の第一人者。ソフトウェア技術者協会の代表幹事、情報処理学会など、日本のソフトウェア工学の発展を担っており、日本初の形式手法に関する著書も執筆。

閉会挨拶
株式会社CSK 常務執行役員 組込システム事業本部 本部長 鈴木 正彦
  講師写真現在、大規模なソフトウェア開発が増加しており、品質の確保が重要な課題になっています。品質の向上には形式手法が有用であるといわれていますが、日本ではまだ数えるほどしか利用されていません。CSKとしては、ご賛同をいただける企業、学術関係の方々とともに、VDMを広めるために、情報の整理・蓄積・公開を目的とする「VDMコンソーシアム」の設立と、教育コースの開催を計画しています。そして、ソフトウェア開発、ひいては日本の産業の発展に、微力ではありますが貢献していきたいと考えています。
*1 形式手法
数学的手法に基づき、曖昧性のない仕様の記述、システムの設計・検証を行なうソフトウェア開発の手法。
*2  VDMTools
ソフトウェアを形式手法を用いて分析・設計・開発するための支援ツール。
VDM-SL(VDMを拡張した形式仕様記述言語)と、 VDM++(VDM-SLをオブジェクト指向に拡張した形式仕様記述言語)が利用可能。すでに産業界、大学では広く利用され、(財)鉄道総合技術研究所・日本フィッツ(株)・フェリカネットワークス(株)・九州大学・北陸先端科学技術大学院大学や、米国ロックウェル社、英国ロールスロイス社、フランスのダッソー社、オランダ国防省などがユーザーとなっている。